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INTERVIEW 01

​Uターン編

「帰りたくない」と

思っていた島に帰ってきた。

笛吹商店街の本通りを脇道に入って少し歩いたところにある飲食店「KONNE lunch&cafe」。歴史民俗資料館のすぐ下にあるので、観光客もよく訪れるというお店は、いつもたくさんのお客様で賑わっています。木のぬくもりを感じられる明るい店内は、古民家を改修した気持ちの良い空間で、ゆっくりと食事が楽しめます。

 

今回は、日頃から島民に愛されるキャラの持ち主の耕司さんと、優しい笑顔で支える奥様の愛さんに、それぞれUターン、Iターンのきっかけのお話を伺いました。

ー小値賀に暮らしてから、どういうふうに心境が変わっていったのですか?

島に帰ってきて1.2年は(福岡に)帰りたくてしょうがなくて。「(福岡に)帰りたい!帰りたい!」と思ったけど、やっぱりこっちに居る友達だったり知り合い、そういう人たちに囲まれて生活していて、「ここでの時間をゆっくり暮らしていこうかな」っていう風な感情になってきたのかな。福岡に行くと「早く島に帰りたいな」みたいな感覚に、だんだんだんだん変わっていったかもしれないですね、気持ち的に。

ー仲間の存在って大きいですよね。小値賀で頑張っている耕司さんの活躍を喜んでいる友達が多いんじゃないですかね。耕司さんのように、これから小値賀島へのUターンを考えている人へメッセージをお願いします。

自分もそうだったけど、高校を出るときは「絶対島に帰らない!」みたいなそういう空気感があって「絶対小値賀に帰ってこない!都会で頑張るんだ!」みたいな感じで思って、外へ出てから、またこうやって十何年して帰ってくることになったけど。

都会で生きてきて感情が多分変わっていったのかな。島に戻ってきて、生活がゆっくりな時間だし、やっぱり戻ってきてよかったなと思っています。

決断するのが、もうね、すごく勇気がいったんですけど、自分も。でもいざちょっと前に進めばたぶん大丈夫。全然小値賀でも、コンビニとか何もないけど。でもねぇ、そんなのいらなかったし、住んでみて。

一歩前へ出て、帰ってきてみれば、昔とは全然違った小値賀が見えるんじゃないかなと思うので、ぜひ一歩前に進んで、小値賀に帰って来てもらえればと思います。

-耕司さんは、高校を卒業してから福岡に就職されて、その後7年前に小値賀に帰ってこられたとのことですが、どんな 経緯で戻ってこられたのですか?

ずっと福岡に住んでいたんですけど、祖母の介護が、母親が大変ということで「帰ってこないか」と言われたのがきっかけです。本当は自分的には帰りたくなくて、ずっと福岡で生活するつもりでいたんですけど。ただ、福岡で介護もしていたので、最終的には「自分しかいないかな」と思って「帰ろう」という決意で、7年前に小値賀に帰ってきました。

-久しぶりに小値賀に戻ってきてからは、どんな想いで暮らしていましたか?

ばあちゃんを自宅で介護しながら、自分も小値賀の介護施設でたぶん3年位働いていたのかな。それで、自宅でばあちゃんを看取って。改めて小値賀に住んでみて、やっぱり落ち着くし、人もいいし、「自分はここで生きていくんだな」という感じで思ってきて。「暮らしていこうかな」ということで、小値賀に住もうかなって思いました。

ー島に戻ってきて、お友達や仲間と過ごす時間を楽しめたこともよかったことなんですね。耕司さんが感じる小値賀のいいところはどんなところですか?

人付き合いというか、結構友達もたくさんいることですかね。向こうでは、挨拶とかもしないけど、こっちではすれ違ったら絶対挨拶するし、車で走ってても、すれ違うときは手を挙げるし。小値賀はやっぱり「人」じゃないですかね。いいところと言えば。

ー戻ってきていろんなことにチャレンジしている耕司さんですが、自分の中で力になっているものは何だと思いますか?

福岡に、結構小値賀の幼馴染がいて、小値賀に帰るって言ったら送別会をしてくれて。
その子たちも小値賀は自分達の故郷だし、帰りたいけど帰れない事情がそれぞれあるとは思うけど、僕がこうやって帰るってなった時に「小値賀を頼む」じゃないけどね、「ちょっと盛り上げてくれ」みたいな感じで、背中を押してくれた同級生や幼馴染がいたから、たぶん小値賀でこうやって、今も頑張っているのかなとは思いますね。

【KONNE lunch&cafe 店主】 

藤田耕司さん・愛​(めぐみ)さん

​小値賀島の中心部の笛吹地区にある飲食店「KONNE lunch&cafe」のご夫婦。耕司さんは小値賀出身で高校卒業後は福岡に就職した後、2016年に小値賀にUターン。介護の仕事やキッチンカーの仕事をした後、2021年、福岡出身の愛さんとの結婚を機に、念願だった自分のお店をオープン。観光客はもちろん、幅広い世代の島民も訪れる人気の飲食店を経営しています。

INTERVIEW 01

​Iターン編

人付き合いを

大切にしていくという

​人生の選択肢

ー島の人に見守られている安心感は子育てをしている方にとってはありがたいですよね。ちなみに、島暮らしで不便だと感じることはありますか?

実際に感じた一番の不便さは、やっぱり医療の面ですね。診療所はあるんですけど、やっぱり専門的なことになると、本土に出ないといけないので。

ましてや病気になったりとか、仮にしてしまうと、具合が悪い中、船に乗って行かないといけないっていう、やっぱりそこの大変さっていうのはきっとこの先あるのかなっていう反面、だからこそ、自分の健康は自分で守らなきゃいけないなっていう、そういうふうにシフトしていっているので、気持ちを切り替えていくのが必要なのかなと思います。

ー今、どんな思いで小値賀で暮らしていますか?

今、自分の中で余裕がすごくできていると思うので、何もないですけど、ない中で、人付き合いっていうことを大切にして生きていくっていう選択肢も、ひとつ自分の人生の中でありなのかなっていうふうに、私は思います。

夕日も毎日違いますし、海も全然違いますし、そういう方に目を向けて生きていくっていう生き方も、私はありなんじゃないかなっていうふうに思います。

ー奥様の愛さんは、島に嫁ぐことになって不安はありませんでしたか?

(耕司さんと)お付き合いしていく中で、小値賀島に来島するにあたって、だんだん結婚というものを意識して、自分がここに引っ越してきた時に、どんな感じなのかなというのを考えながら来ていました。確かに何もない島で。コンビニもないですし。今まで福岡では物に溢れて、なんでも便利な生活をしていた自分が、何もないところに急に飛び込むのってどんな感じなのかなっていう、不安な部分も多少はあったんですけど。

実際ここに何回か来ていくうちに、「あんまり必要ないな」と。なかったらなかったで、みんなやっぱり工夫して作るし、何でも。その工夫するっていうことがすごいこの島では大事なんだなっていうのを、この来島している間にいろいろ目の当たりにしてきて、特段なんか不安とかはなかったです。むしろ楽しみの方が大きくなっていった感じです。

ーお子様がいらっしゃいますが、島で子育てをしてみていかがですか?

娘がいるので、この島に来た時に、実は娘はすごく(福岡との)ギャップに戸惑っていましたね。夏の暑い日、帰りに知らない近所のおばちゃんが「暑いだろうからアイス持って行きなさい」とかって言ってくださるんですけど、福岡では、知らない人から物を貰ってはいけないって言っていたので。

すれ違う時に挨拶するのがこの島では当たり前ですけど、福岡では、知らない人には話し掛けてはいけない、挨拶ではないんだけども、そういう話し掛けたりとか、声を掛けられたらちょっと用心しなさいねっていうことだったので。

最初はギャップはあったものの、慣れてみればなんかこう「みなさんが見守ってくれている」という感じで。小学校の登校の時、コケて血が出たりしていれば、連絡が入って「今日コケてたよ」って言われて、「でも絆創膏貼ってあげたからたぶん大丈夫だと思うよ」とかって。ありがたいですね。

私たちも仕事をしているので、どうしてもずっとは見ていられないんですけど、みなさんが見守ってくださっている中で、「みなさんに育ててもらってるな」っていうのをすごく感じていて、「子育て(をする環境として)は良かったな」って思ってます。

ー不安より楽しみのほうが大きくなっていったんですね!それでは、実際に小値賀に住んでみた印象はどうですか?

そんなに親しくない、例えば近所の方でも、怪我をしたって聞けば、何か差し入れを入れたりとか、そのお返しに、お野菜とかお魚をもらったりとか、「みんなが繋がってる」っていう雰囲気はこの島に来て、すごく印象的でした。その反面、やっぱり福岡とは違う、人との距離の取り方っていうのがすごく難しいなって思うのも正直な感想です。

INTERVIEW 01

​飲食店起業編

仲間たちと

小値賀を盛り上げたい

ー大がかりな作業をして作った念願のお店のオープン。おめでとうございます。とても素敵に仕上がっていますね。お店のロゴも素敵ですが、お店の名前「KONNE」の由来は何ですか?

耕司さん:「方言」を使いたくて。でも小値賀の方言って結構わかりづらいし、そしたら「(こっちに)来ない?」って「こっちにこんね」っていう長崎の方言があるので、ひらがなの「こんね」より、ローマ字にしたらかっこいいかなって思ってつけました(笑)

ー人気メニューは何ですか?

耕司さん:一番人気は「チキン南蛮」ですね。自家製タルタルソースを使っていて、結構ボリュームがあって、人気です。

ー今後の展望を教えていただけますか?

愛さん:まだちょっと今は、どういうふうにお店をしていくかっていうことが、全てはできていないので、そこに慣れていったら、ゆくゆくは、小値賀という島をこの店から発信していけるようになればいいなと思っています。

「五島列島で盛り上げよう」みたいな動きがあると思うんですけど、五島列島間の交通の便があまり良くないなというのは思っていて。もっと小値賀も含めて全体で盛り上がっていけるようにしたいなっていうのは、ゆくゆく思っているところです。それをここの店を含め、耕司さんとかみんな今、「小値賀を盛り上げよう」と動いてる世代なので、その人達と一緒に頑張っていけたらいいなって思っています。

ー移住されてから、どんな経緯で今のお店を始めることになったのですか?

耕司さん:祖母を看取って、介護の仕事を続けていたんですけど。元々、調理師の免許を持っていたんで、ちょっとキッチンカーをやらないか?と声があって、やってみました。キッチンカーもおかげさまでたくさんお客さんが来てくれてたのですが、その時に、結婚を機に店を構えたいなと思ってて。ちょうど国境離島の助成金というか、それを使ってできるって話があったので、じゃあ、ちょっと(自分のお店を)やってみようかなということで始めました​。

ーオープンから2年が経ちましたが、現在のお店の様子はいかがですか?

愛さん:ありがたいことに、島内の方にも島外の観光客の方にもたくさん、特にランチタイムはもう満席になるくらいお越しいただいています。ご高齢の方が多い島だということですが、小値賀のご高齢の方、ほんとにお元気な方が多くて、全部残さずみなさん食べてくださるので、私たちも作りがいがとてもありますね。テイクアウトもよくご利用いただいているので、今後も小値賀を支えていけるように「頑張らないといけないな」って思ってます。

【KONNE lunch&cafe】
住所:小値賀町笛吹郷1537
営業時間: 11:00〜17:00
※予約いただければ夜も開けます。
☎︎ 0959-42-5843
定休日:木曜日
※駐車場あり

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祖母の介護がきっかけでUターンした耕司さんと、結婚をきっかけに小値賀にIターンした愛さん。いろんなタイミング、巡りあわせで、小値賀に住み、結婚もして、自分のお店もオープンしたお二人。仲間と一緒に島暮らしを楽しんでいる耕司さんと、子育てを楽しみながら耕司さんを支える愛さんがいるからこそ、KONNEが誰でも気軽に入りやすい雰囲気になり、いろんな方が食べに来るんだと思います。今回、終始幸せそうにお話をされている二人の姿を見て、こちらもなんだかほっこりした気持ちになりました。島の魅力は、やはり「人」ですね。周りの方との付き合いを大切にすることで、自然と人が周りに集まってくる。そして自分達も住みやすい環境が作れるんだということを、今回のインタビューでも改めて実感させていただくことができました。これからお二人のような、小値賀を盛り上げたい!という若い人達が増えていくことで、この小さな島の未来がより明るく輝いていくことに期待しています。

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